はじめに
SESエンジニアとして現場に入ると、技術や開発環境だけでなく「コード品質」の基準や運用方法に戸惑うことが多いのではないでしょうか。 現場ごとにルールが異なり、何を優先すべきか迷う方も多いはずです。
特に、未経験からSESに入った場合は「何を学べば評価されるのか」「どこまで品質を担保すればいいのか」といった不安がつきまといます。 この記事では、SES現場で役立つ「コード品質チェックリスト」の作り方や活用法を、具体的な事例や運用ポイントとともに解説します。
品質管理の基本から、現場で実践できるチェック項目、よくある失敗例とその対策まで網羅。 現場で迷わず品質を担保したい方、体系的に学びたい方におすすめの内容です。
用語解説:SES(システムエンジニアリングサービス)
SESは、企業が自社のITプロジェクトに外部エンジニアを常駐させて業務を進める契約形態です。派遣や請負と異なり、成果物ではなく「作業そのもの」に対して契約します。用語解説:コード品質
コード品質とは、ソフトウェアの保守性・拡張性・安全性・パフォーマンスなどを総合的に評価する指標です。高品質なコードはバグが少なく、修正や機能追加がしやすい特徴があります。
SESとは?現場の特徴とよくある課題
技術・ルールの違いと品質への影響
- 技術スタック(例:Java、React、Dockerなど)が現場ごとに異なる
- コーディング規約やレビュー基準もバラバラ
- 品質管理の体制が整っていない現場も多い
用語解説:技術スタック
開発現場で使われるプログラミング言語やフレームワーク、ツールなどの組み合わせを指します。用語解説:コーディング規約
コードを書く際のルールや方針。命名規則やインデント、コメントの書き方などが含まれます。用語解説:レビュー
他のメンバーがコードや設計を確認し、ミスや改善点を指摘するプロセスです。
このような違いがあるため、SESエンジニアは「どこまで品質を担保すればよいか」「何を基準にコードを書くべきか」と悩みやすいのです。特に、レビューや設計方針が曖昧な場合、品質のばらつきやトラブルにつながることもあります。
(SES現場の働き方や他業態との違いについては『SES・SIer・自社開発の違い徹底比較!あなたに最適な働き方は?』をご参照ください)
コード品質の定義と重要性
SES現場での品質基準
- 可読性:他のエンジニアが理解しやすいコードか
- 再利用性:同じ処理を何度も書かず、関数やクラスでまとめているか
- 保守性:仕様変更やバグ修正が容易か
- テスト容易性:単体テストや結合テストがしやすい構造か
用語解説:可読性
他の人がコードを見て理解しやすいこと。命名やコメント、構造が分かりやすいと可読性が高いと言えます。用語解説:再利用性
一度作ったコードや部品を、他の場所でも使い回せる性質。関数やクラスでまとめることで高まります。用語解説:保守性
仕様変更やバグ修正がしやすいこと。複雑すぎるコードは保守性が低くなります。用語解説:テスト容易性
単体テストや結合テストがしやすいコード構造。テストしやすい設計は品質向上につながります。
品質管理の基本ポイント
- コーディング規約の遵守(例:命名規則、インデント、コメント)
- レビュー体制の構築(複数人でのコードチェック)
- テストコードの作成と実行
- ドキュメント整備(設計書・READMEなど)
用語解説:テストコード
プログラムの動作が正しいかを自動で確認するためのコード。バグの早期発見に役立ちます。用語解説:ドキュメント
設計書やREADMEなど、システムやコードの仕様・使い方をまとめた資料です。
これらを意識することで、現場ごとの品質基準の違いにも柔軟に対応できるようになります。
コード品質チェックリストの作り方・使い方
主要項目と現場カスタマイズ例
- 命名規則が統一されているか
- 不要な変数や関数が残っていないか
- 例外処理が適切に記述されているか
- コメントやドキュメントが十分か
- テストコードが作成・実行されているか
- 外部ライブラリのバージョン管理ができているか
- セキュリティ上の懸念(SQLインジェクション、XSSなど)がないか
用語解説:例外処理
プログラム実行中に予期しないエラーが発生した場合に、適切に対応するための仕組みです。用語解説:外部ライブラリ
プロジェクトで利用する外部のプログラム群。バージョン管理が不十分だと動作不良の原因になります。用語解説:SQLインジェクション
データベースへの不正な命令を送り込む攻撃手法。セキュリティ対策が必須です。用語解説:XSS(クロスサイトスクリプティング)
Webサイトに悪意のあるスクリプトを埋め込む攻撃。ユーザー情報の漏洩などにつながります。用語解説:バージョン管理
プログラムやライブラリの変更履歴を記録・管理する仕組み。依存関係のトラブル防止に重要です。
現場ごとに技術や運用ルールが異なるため、プロジェクト開始時に「現場用カスタマイズ」を行うことが重要です。 例えば、Java現場なら「Spring Bootの設定ファイル管理」、React現場なら「コンポーネント分割のルール」など、技術特性に合わせて項目を追加しましょう。
(Spring Bootの設定やJPA・nativeQueryの使い方については『Spring Boot Repository徹底解説|JPA・nativeQueryの使い方と失敗例』をご参照ください)
よくある失敗例と対策
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チェックリストが形骸化し、誰も見なくなる
対策:定期的な見直しと現場メンバーの意見反映 -
項目が多すぎて運用が煩雑になる
対策:重要項目に絞り、優先順位を明確化 -
品質基準が曖昧で、レビュー時に意見が割れる
対策:具体的な例や数値基準(例:関数の行数は30行以内など)を明記
用語解説:形骸化
本来の目的や効果が失われ、形式だけが残ってしまうこと。用語解説:優先順位
物事の重要度や実施順を決めること。項目が多い場合は優先順位をつけて運用負荷を減らします。用語解説:数値基準
具体的な数値で基準を示すこと。例:関数の行数は30行以内など。
品質管理の運用フローと改善サイクル
実践事例と運用ポイント
- プロジェクト開始時にチェックリストを作成
- コードレビュー時にチェックリストを活用
- 定期的に品質指標(バグ件数、レビュー指摘数など)を集計
- 問題があればチェックリストや運用方法を見直す
例えば、あるSES現場では「レビュー指摘数が多い項目」を毎月集計し、次月のチェックリストに反映することで、品質のばらつきを減らすことに成功しました。また、現場メンバーが交代するタイミングで「現場ノウハウ」をドキュメント化し、引き継ぎをスムーズにする事例もあります。
品質管理ツール(例:GitHub Actions、Jenkinsなど)を活用することで、チェックリスト運用を自動化し、人的ミスを減らすことも可能です。
(品質管理ツールの活用や現場の自動化事例については『VSCodeとGitHub Copilotの正しい使い方|AI補完でつまずかないための実例&Q&A集』をご参照ください)
用語解説:品質指標
品質を数値で測るための指標。バグ件数やレビュー指摘数などが代表例です。用語解説:ノウハウ
実践を通じて得られた知識やコツ。現場での運用や改善に役立ちます。用語解説:自動化
人手を介さずにツールやプログラムで作業を効率化すること。品質管理の運用負荷を減らします。
まとめ・現場で品質を担保するために
- コード品質の定義と基準を明確にする
- チェックリストを現場ごとにカスタマイズする
- 運用フローと改善サイクルを仕組み化する
- 失敗例・成功事例を共有し、ノウハウを蓄積する
用語解説:カスタマイズ
現場やプロジェクトの状況に合わせて内容や運用方法を変更・調整すること。用語解説:仕組み化
作業や運用をルール化・標準化し、誰でも同じように実施できるようにすること。
これらを実践することで、SESエンジニアとして「迷わず品質を担保できる」現場づくりが可能になります。
まずは自分の現場で使えるチェックリストを作成し、定期的な見直しと改善を続けてみてください。
FAQ
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SES現場でコード品質はどう管理されている?
チェックリストやレビュー体制、品質管理ツールを活用して管理されています。 -
チェックリストはどんな項目を入れるべき?
命名規則、例外処理、テストコード、ドキュメント整備など現場の技術特性に合わせて選定します。 -
品質管理でよくある失敗例は?
チェックリストの形骸化、項目過多による運用負荷、基準の曖昧さなどが挙げられます。 -
チェックリストは現場ごとにどうカスタマイズする?
技術スタックや運用ルールに合わせて項目を追加・削除し、現場メンバーの意見も反映します。 -
コード品質を高める具体的な方法は?
コーディング規約の遵守、レビュー体制の強化、テストコードの充実などが有効です。 -
品質管理ツールは何が使われている?
GitHub Actions、Jenkins、SonarQubeなどが一般的です。 -
品質管理の改善サイクルはどう回す?
定期的な指標集計とチェックリスト見直し、現場ノウハウの共有がポイントです。
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